「菓子なら今丁度出来上がったところだ」
「…ふぅん?」
玄関先に立たせたままにさせておくわけにもいかないので、シャドウはとりあえず二人をリビングへと案内した。
キッチンの台には未だ湯気を立てた南瓜のスイートポテトが並んでいる。もう暫し待てば、食べ頃になるだろう。
ソニックが勝手知ったる様子で定位置に座る。メフィレスは、音も立てずにランタンを眺めるシルバーに歩み寄った。
「あ、メフィレスも来たのか?」
随分と可愛らしいのを着ているんだね、シルバー。
ずっとそれを見ているようだけど、何か気になることでもあるのかい?
「へへ、これ、オレが作ったんだぜ!」
無邪気に、心底嬉しそうにシルバーは笑う。己が初めて作った南瓜のランタンを、飽きもせずに眺め続けている。
ゆらりと、メフィレスがシルバーの腕を取った。
「メフィレス?」
おいでシルバー。シャドウのつくってくれたお菓子でも食べよう
引き剥がすように、メフィレスはシルバーをソニックとシャドウが居る卓へと先導する。
先程までキッチンに置かれていた菓子は、ほかほかと湯気を立てながら品良く並べられていた。
シャドウが卓に置いておいた白磁のポットを手に取り、軽くくゆらせる。
蓋を開ければ、どこか甘い果実のような香りが漂った。
真っ白な陶器で作られたティーカップが、シルバーとメフィレスの前に置かれる。
ポットが傾けられれば、鮮やかな紅がカップを満たしていった。
ソニックには、深い藍色のマグカップが何も言わずに置かれていた。漂うのは、少し焦げたような、苦い香り。
「ソニックは紅茶、飲まないのか?」
「Hum…そっちは苦手でな、どっかの誰かさんみたく、お高くとまってるだろ?」
悪戯めいた口調でソニックがチラリとシャドウを見上げる。視線に気付いた影の眉の皺が、更に深くなった。
同時に、白磁のポットの横に置かれた、黒曜石色が溜められたサーバーがタプン、と音を立てた。
「おかわりでも所望か?ソニック」
「No thank you! …まぁ、本当のことだけどな?」
バチバチと火花が舞っている様子に、シルバーは困ったようにソニックとシャドウを見遣る。
隣に座るメフィレスは喧騒もどこ吹く風でシャドウが淹れた紅茶を優雅に飲み干した。
彼の顔に、普段では決して見ることのない口が形成され、闇色の誘導の中に吸い込まれていく。
その仕草は、常日頃のシャドウそのもので。決定的に違うのは、その色彩のみだった。
メフィレスが己から何かを摂取するなんて珍しいと、シルバーはついまじまじとその様子を見遣ってしまう。
その視線に気付いたメフィレスは、さも可笑しそうに嗤った。
そんなにボクが何かを食べたりしているのが面白いのかい?
「え、あっ、いや、そうじゃないんだ。ただ、いつも食べないからさ」
シャドウがボクの為に淹れてくれたというのに、手を付けないなんて勿体無いだろう?
クスクスと、空気を振動させながらメフィレスは笑う。
純粋に自分の為に普段毛嫌いするシャドウが施しを行うことが嬉しいのか、それともまた別なのか。
その真意はシルバーには図れなかった。不思議そうに、首を傾げる。
その無邪気さを壊してしまいたいと、衝動的にメフィレスは征服欲を感じた。
おもむろに、シルバーの瞳に、己の視線を合わせる。一瞬のたじろぎを、メフィレスは見逃さなかった。
おいでシルバー、いいことを教えてあげよう。
今日はハロウィン。お菓子を用意できなかった悪い子は
悪戯されてしまうんだよ。
するりとメフィレスの腕が、シルバーを捕らえる。抵抗しようにも、向かいでぎゃあぎゃあと騒いでいるソニックとシャドウに気付かれるのも、拙い。
きっとソニックもそのつもりなんだろうな、と直感的にシルバーは理解してしまった。
半ば諦める形で、メフィレスと共に連れられるように卓を離れ、ランタンを作るまで惰眠を貪っていたソファへと導かれる。
静かにソファに横たえさせられ、視界はメフィレスの姿だけ。爬虫類の瞳が、満足そうに輝いた。
さぁ、ここなら邪魔もされない。たっぷり遊んであげる。
「あ…うん、メフィレス。それなんだけど、さ」
気まずそうに、シルバーが口を開く。
シルバーの視線の先には、額に四つ角を浮かべた、ソニックとシャドウの姿。
「お前らだけお楽しみってわけには、いかないぜ?」
「離せ!僕はそんな趣味は持ち合わせていない!やるなら君だけ混ざるんだな!」
騒がしさはそのままに、ソニックの片腕にはシャドウの細腰がすっぽりと収まっている。
自由を奪われたシャドウは、怒りを露にしながらソニックの頬などを力任せに叩いて、ソニックの苛つきを増長させているようだ。
「うるっせぇなぁ、もうちょっと黙ってらんないのかよ」
ドサリ、とシャドウがソニックの腕の中から無造作に解放される。急な自由に受身も取れずにシャドウは床のフローリングに転がされた。
起き上がるよりも先に、ソニックに押さえ付けられる。
「っ、…君が最初から、こんな悪ふざけを思いつかなければいい話だろう!」
腹部を蹴り飛ばしてやろうかという勢いで脚を折り曲げるが、それすら絡めとられて失敗に終わる。
既にシャドウの我慢は臨界点に到達しているらしい。普段の取り澄ました顔などは無く、怒りに任せて言葉を連ねていく。
そんな様子をソファに縫いとめられたシルバーはただ見ることしか出来なかった。
やれやれ…静かに2人でしようと思ったのにねぇ…
溜息混じりのメフィレスの声が、頭上から降ってくる。
重みが消えたと思ったら、普通にソファに座るメフィレスの上に、ソニックとシャドウが見えるようにそちらを向かされて座らされた。
どうせこんなこと、そうできるものじゃないし、いっそ4人で愉しもうか。
「なっ!」
「メフィレスっ!?」
「……いいぜ?そうこなくっちゃ!」
悪戯めいた口調に、シャドウとシルバーは絶句し、批難の声を上げる。
ソニックは、にやりと楽しい遊びを提示かれたか子供のように笑みを浮かべた。
シャドウの視界が反転する。獣のように四つん這いにされ、屈辱に脳が焼ける気分だ。
覆い被さるようにソニックの体が背後にやってきて、大きな手が柔らかな皮毛に触れる。
熱を持った舌が背中の刺から、ゆっくりと尻尾に向かい這わされていく。
己を知り尽くしたかのような的確な愛撫に、むくりと雄の象徴が持ち上がる感覚を覚えた。
「…なぁんだ、しっかり感じてるじゃねーか」
にんまりと、満足そうにソニックは笑う。まだ育ちきらぬ欲望の証に、指が触れては、撫で上げられていった。
「っ、く…!」
思わず声をあげてしまいそうになるのを、理性でもって抑え付ける。す、とソニックの瞳が細められた。
「今更お高く止まってんじゃねーよ。ほら、しっかりシルバーにみせてやんな」
ぐ、と無理矢理顔を持ち上げられ、視線をソファの上へと向けさせられる。真向かいに移るのは、煌く金色の瞳。
既にシルバーの意識は混濁を始めているらしい。焦点が合わぬまま、へらりと笑みを浮かべる。
「ぁ…しゃ、ど…」
「シル、バー…君は、」
バランスをとるのもままならぬ体制で、ぎこちなく腕を伸ばす。しかしそれすら阻まれて、届かぬままに距離が開いた。
「相手を間違えるなよ」
おや、まだ向こうにいるのがシャドウだって、わかったのかい?
メフィレスとソニックの言葉が、それぞれに向けられて突き刺さる。シルバーの屹立に闇色の指が絡まった。
くちゅりと濡れた音がシャドウ達の耳朶に直接届いてくる。イヤイヤとシルバーは首を振るが、幼い子がむずがっているようにしか見えない。
思わずシャドウは視線を逸らせた。何かを思い出してしまいそうで、嫉妬に狂ってしまいそうで、意図的に意識をシルバーから剥がす。
「ちゃんと見てやれよ。シルバーが可哀想だろ?」
逸らせた顔を、強制的に正位置へ引き戻される。飛び込んでくるのは、銀の痴態。
「っ、ぅ…めふぃ、れすっ…いや、だ…っ」
嫌がっているようには、見えないんだけどねぇ?
メフィレスの指が、雄に絡まり、もう片方の手が、脚を大きく開いていく。
恥部を余すことなく晒されたシルバーの頬、耳先が紅に染まっていった。羞恥心に、ぐらりと視界が歪む。
屹立に這わされていた指が、ゆるやかに下方へと落ちていく。奥まった、秘部にゆるりと白濁を纏った闇が、薄桃色の襞を掻き分け侵入していく。
「ぁ、くぁ…っ!や、いやだっ…!」
シャドウに、ソニックに見られているという事実が、シルバーの心を蝕んでいく。
それをただ、見ていることしか出来ない歯がゆさに、シャドウはギリ、と奥歯を噛み締めた。
「お楽しみは、これからだぜ?」
「や、めろ…っ、…!」
勃ち上がったシャドウの欲望の証を、ソニックの指がリズム良く扱き上げる。
獣の本性を剥き出しにするような速度に、思わず膝が笑う。己の体重すら支えるのが困難になり、腕をつき下半身をソニックに突き出すような格好に、背後から嗤う表情が空気から伝わってくる。
「は、っ…そ、にっく…」
パタ、パタッと床に染みが広がっていく。ぬるつく音と共に、シャドウの息が上がる。
シャドウ、顔をあげてごらん
メフィレスの声が、頭上から降ってくる。重たい頭を傾けて、視線だけを一段高みにいるシルバーとメフィレスに向けた。
「ぅあっ、ぁ、ふ……っ!」
淡桃色の肉壁が、メフィレスの雄を銜え込む。緩やかに抜き差しが繰り返される有様を、目の当たりにする。
金色の瞳は力いっぱい瞑られて、眦には真珠が浮かんでいた。
「っ……!」
「ほらシャドウ、お前にも、やるよっ!」
ぎち、と割り開かれる感覚に、シャドウは思わず声を漏らした。
向かいのシルバーの限界が近いらしく、その雄はふるふると震えて先端からはしたなく雫を零し続けている。
奥まで突かれたことにより、シャドウの屹立も張り詰め、しどどに濡れそぼり、水溜りを形成していく。
ほら、シルバー、シャドウに飲ませてあげなよ
「ひ、っ……あぁっ…!!」
ぐ、とメフィレスの指が、シルバーの欲の先端の窪みを引っ掻く。勢い良く放たれた白濁は、落下してシャドウの漆黒を白く染め上げる。
同時にソニックがシャドウの最奥を抉っていく。視界が真っ白に染まる感覚と共に、シャドウもまた欲望を撒き散らした。
さぁ、お楽しみは、これから。
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