しん、と降り積もる雪のように
静かに静かに、落ちては滞っていく。
はじめは知らなくてもいいと そう思っていた。
それを大切なものだと気付かせてくれたのは
間違いなく 君。
『情愛メランコリー』
初めて見たときは、ただ自分に似た、それだけの存在だった。
「Hey!そんな所でなーにしてるんだ?」
「………ソニックか。」
サラサラと、柔らかな心地よい風が針を撫で付け、流線を描いては流れていく。
萌葱が色濃く映える鮮やかな太陽、それを避けようと逞しく幹を張った大木の下で、穏やかな時間を過ごそうとしたその矢先だった。
たった一瞬、突風が吹き荒れる。
気付ば自分の目の前には、風の化身が普段と全く変わらない笑顔で見下ろしていた。
「僕が無為にただ景色を眺めているのは可笑しいか」
「そんなことないぜ? ただ」
「ただ、何だ」
青色を纏った彼は淡々と言葉を返す僕に、悪戯めいた笑顔を向ける。
そのまま彼は僕の隣に足を投げ出すように腰を下ろし、間の抜けた欠伸をした。
少々己の瞼がつりあがる感覚がしたが、自覚的に無視をしてその続きを促す。
「周りを見れるようになったよな、オマエ」
昔は自分のことで手一杯だったくせにと、ニヤニヤ笑いで彼は僕の瞳を真っ直ぐに見つめる。
その輝きが少々僕には眩しすぎて、咄嗟に逃げるように視線を逸らした。
「………ククク」
低く、乾いた笑いが、目の前の彼から発せられた。
彼には似合わない、似合うわけのない、歪んだ笑み。
「な……」
「随分このハリネズミにご執心のようだねぇ?シャドウ」
青が蒼へと、仄く堕ちていく。
風に愛された英雄の姿は溶けるように、ドロリと闇に消えていく。
眼前には鏡に映したような己の姿。決定的に違うのは
その、色彩。
「メフィレス……ッ!」
「アハハハハハッ!どうしたんだいシャドウ?そんなにボクの姿が気に入らなかったのかい?」
ジャキ、と徐に黒に赤の銃身を握り締めた。
まるで自分に誂えられたかのように手になじむそれは、鈍く柔らかな輝きを見せた。
「どうしたんだいシャドウ。ほら、撃ってごらんよ、その血に塗れた銃で!」
ズル、と指から銃が滑り落ちる。開かれた手袋の表面には、赤、緋、朱、アカ。
「……!!!」
「なんだい、気付いていなかったのかい?」
ズ…と闇に射抜かれる。その瞳は、彼と同じ深いエメラルドの、優しい光。
侮蔑の光がありありと見えるその様子は、さながら彼の優しさすら侮辱されたようで。
反射的に血塗れの銃を拾い上げ、躊躇い無くトリガーを引いた。
「…彼を、穢すな…ッ!」
「ハハハハッ!いいよ、その眼。ゾクゾクするね
優しい優しいシャドウ。いっそボクを殺してみるがいい!!」
優しい君の笑顔が、僕を認め、許してくれるのであれば
僕は僕で在り続けられるのかも知れない。
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